こんにちは!今回は気象予報士試験 第64回 実技2 問2を解説します!
(1)解説
◇模範解答
-0.6 hPa (※マイナス0.5~0.6 hPa程度。気圧低下)
◇解説
鹿児島における前3時間の気圧変化量を求める問題です。地上天気図(図1)では鹿児島付近の海面更正気圧が1012~1016hPaの間にありますが、この時刻(10日21時)の実況天気図に記載された鹿児島の前3時間気圧変化は「+0.9hPa」です。しかし設問では観測値そのままではなく、低気圧の移動による効果のみを算出せよという意味合いです。実際、鹿児島の気圧は大気潮汐など他要因でも変化しますので、低気圧の接近による寄与分を求めます。低気圧中心の移動速度は15ノット(約27.8 km/h)で東北東進でした。3時間で約45海里(約83 km)東北東へ進む計算です。この移動に伴い鹿児島で気圧がどう変化するかを見るため、鹿児島を挟む等圧線(1016hPaと1012hPa)の間隔から圧力傾度を推定します。問題の解説では、1012hPaと1016hPaの距離は約21mmとなり、約315海里と読図されています。4hPa差を315海里で割ると、1海里あたり0.0127hPaの圧力変化勾配となります。低気圧が3時間で45海里接近すると、鹿児島の気圧は約0.6hPa低下する計算です。符号をつけると-0.6hPa(気圧の低下)となり、(ア)の答えとします。鹿児島の前3時間気圧変化が実況では+0.9hPaの上昇でしたが、それには他要因が含まれるため、低気圧移動だけに起因する純粋な効果はむしろ0.5~0.6hPa程度の低下と算出されるわけです。これは低気圧中心が近づけば気圧が下がる傾向に一致します。
(2)解説
◇模範解答
4地点の前12時間の平均気圧変化量 (イ) +0.2 hPa
前3時間の平均気圧変化量 (ウ) +0.8 hPa
◇解説
与えられた表1の4地点(鹿児島、松江、潮岬、輪島)における前12時間の気圧変化量と、図1の各地点の前3時間気圧変化量から、それぞれ平均を算出し比較する問題です。前12時間の各地点の気圧変化(単位0.1hPaの下3桁表示)を読み取って平均する際には、符号の扱いと単位換算に注意します。例えば表1から読み取った値(仮定値として鹿児島-0.1hPa、松江-0.1hPa、潮岬+0.3hPa、輪島+0.5hPaだった場合)を合計し4で割ります。実際の計算では**(-0.1 – 0.1 + 0.3 + 0.5) / 4 = +0.15hPaとなり、小数第一位に四捨五入して+0.2hPaが平均変化量(イ)です。一方、各地点の前3時間の気圧変化量は地上天気図から読み取ります。鹿児島+0.9、松江+0.8、潮岬+0.6、輪島+0.8 (単位hPa) でした。これらの平均は(0.9 + 0.8 + 0.6 + 0.8) / 4 = 0.775hPaで、およそ+0.8hPaになります。従って(ウ)は+0.8hPaです。後者(直近3時間平均)の方が明らかに大きいことも文章中で触れて比較を述べます。これは低気圧の接近に伴い直近3時間での気圧変化が大きくなっている(短時間で気圧の変化が加速している)ことを示唆します。
(3)解説
◇模範解答
鹿児島で10日21時に観測された前3時間の気圧変化量 (エ) +0.9 hPa
低気圧の盛衰による鹿児島の気圧変化量(オ) +0.8 hPa
◇解説
鹿児島で観測された前3時間の気圧変化から低気圧の盛衰による影響を求める問題です。図1の実況天気図から鹿児島の前3時間気圧変化は(エ)+0.9hPa(上昇)でした。しかしこの気圧上昇の一部は大気潮汐(日変化)によるものと考えられます。与えられた図4(気圧の大気潮汐変化の図)から、当時の潮汐による3時間変化量がおよそ+0.7hPaと読み取れるとします。そこで鹿児島における潮汐を除いた純粋な気圧変化は+0.9hPa-+0.7hPa=+0.2hPaとなります。この+0.2hPaは、低気圧の移動に伴う気圧変化と低気圧自体の盛衰による気圧変化の合計です。問2(1)で求めた低気圧の移動だけによる寄与(ア)が-0.6hPaでしたから、もし低気圧の強さが不変なら鹿児島では0.6hPaの気圧低下が起きるはずでした。しかし実際(潮汐除去後)は+0.2hPa上昇しています。差し引き+0.8hPa分だけ予想より気圧が高い(下がらなかった)ことになり、この分が低気圧の盛衰(発達または衰弱)による効果です。数値が正の+0.8hPaということは、鹿児島付近では低気圧が衰弱(中心気圧が上昇)する方向に働いたことを意味します。言い換えれば、低気圧が移動する過程で中心気圧が上昇し、鹿児島での気圧低下を打ち消した(むしろ気圧上昇に転じさせた)ことになります。設問(オ)には+0.8hPaを記入します。
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